sevilla (5), spain 2008

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音源に対面して音を聴くのではなく
音源の背後から音を聴くとき
演奏者の息づかいや身体感覚がよくわかる
何かに対面しようとせず
何かにいわば追随していくことによって
身体の予備能力が呼び覚まされ
身体感覚が音という一つの現象のなかに
深く降りていくことができる

言葉の前に感じている地肌の感覚が浮上してくる一方で
言葉の力がこの地肌の感覚を持ち上げる契機となっている
想像力ー言葉の究極的な形は
日常の出来事の抑揚に密着しそれらを徹底的に感じ取る形において
鍛えられなければならない

木曽川の水面を毎日みていると
水面がみえない風の倍音に揺れている
青色と桃色の際限のないグラデーションのなかに染まったその水面は
色彩の連続した無限の変化のなかに輝く
セザンヌはそうした地肌の感覚で
色の言葉を見出したのかもしれない
色の言葉が夢と現実の接点となり
現実が絵画という夢のなかで一段と現実の力を帯びる

日々眺めている川縁の新緑
咲き誇る花々の生命力
人も自然の一部にあって
それぞれ生きている
そのものたちの聴こえない倍音に
地肌の耳を傾け
音の言葉を聴く

想像力を言葉によって鍛えて
鍛えられた想像力で写真をみて
言葉を失いつつ
写真の言葉を聴く