BENAOJAN (spain)

benaoján(6), spain 2008

shapeimage_1-135

根をもつ
秘やかに


根をずらす
繊細に




benaoján(5), spain 2008

shapeimage_1-136

音楽、音楽、
本当に本当に
大切に大切に

音、音、
かみしめてかみしめて

どうにもしようのない
郷愁と
涙とともに
静かに

いつ
なぜ
とてもうれしいのに
郷愁がおしよせるのか

いつ
なぜ
とても楽しいのに
涙がとめどもなく
流れるのか

梅の木のこぶに
梅の花に
日だまりに
死を感じる

遠くみえない声に
遠く聴こえない地平に
きっとそこにある広い海に
生を感じる

どうにもしようのない郷愁
死と生の安らぎを
いまここに呼ぶ

人がこの世にある限り
音楽は生き続ける
夜のうたを朝に向かって弾くのだ
朝の日だまりとともに消え去るうたを奏でるのだ




benaoján(4), spain 2008

shapeimage_1-137

夜になれば
みな寝静まる

夜の内奥を聴く
内なる明日のために




benaoján(3), spain 2008

shapeimage_1-138

遠くの家
汽笛


静謐とノイズ
音を聴く

そのときそこにいたという
不在

今ここにあることに
立ち留まり


前をみつめ
過去を宿し
過去を忘れる




benaoján(2), spain 2008

shapeimage_1-139

焦点のない眺め
一点にふりそそぐ視線の根
すべての境目が融和し
足下からずっと続く岩石が心に緩衝する
薄緑色の空が心に映る
ちょうどそこにあった池の
透き通った湧き水にしみ込む足
水のぬめりを感じる
その感触とたわむれようとせずに
ただ故郷を感じる
生きる重みから離れたこのひとときに
知らず知らず
身体が重く心へ語りかける

ここはどこなのかと思う間もなく
ここから遠くはなれて
どれくらい時がたったのか
再びここへと戻ってくる
そのときここはここではない

ここは私の故郷へと還るための窓
その窓を通じてここは
「私ーここ」のがんじがらめの
物質的絆から開放され
ここでなくなる
ここを私の窓そのものとすることによって
ここをここでなくすこと




benaoján, spain 2008

shapeimage_1-140

春を迎えれば東京をでていく
垢を落とし再出発して歩む

脱皮
蝉のように
内側から
ひそかなる飛躍を

残すもの残されるものを
残りの生への思いと
脱皮殻を思う
脱皮が深まるだけ
味わいもでるだろうと
殻に愛着がもてるようにと
殻の残し方朽ち方を思う

変態
残りの生にむかって
一匹の蛹となるために
擬態という奥深い知恵が要る

一つの個の形を求めるために何十年も備える
生をまっとうするにはそれだけの準備が要る