筋目書き(二十七)

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分化し、二度と戻らない人間の自然をこの内部に見つめるなら、死の克服に取り憑かれた意思や夢の技術に対極して、生の儚さや微明のなかにこそこの身体を浸さなければならない。静かな空間と音色の質感を小さな条件としながらも、生の手まえで静まる凪風を契機として体内を風の音が吹き荒れ、生の欲望が死のエロティシズムに洗われるように変容しながら無に退歩してゆく身体のプロセスのなかで、つつましくもどこかはっきりとした口調で、生まれることのなかった胎児の言葉が音に呼び出されてはこの欲望をなだめようとする。死者に贈られる生きて輝く花が惜しまれるように枯れて、姿を変えながら死へと同化して還っていく、そのように静かで遥かなところから到来してきては形にならないままに消えていく束の間の音の時間にひたりながら、絵になる手まえの空間、だから決して世界にそのまま刻印されない空間で、生死のあいだにただよい浮かんでいる皮膚のような生地に織り込まれているぼんやりとした影の花のかたち、死者の音の光をはっきりとみとどけること。写真と本文へ… to photo and read more…