Aéroport Roissy-Charles-de-Gaulle, paris, france 2008
人生が旅だとしたら
輪廻する人生に始まりも終わりもないかもしれないが
旅の記憶ならあるかもしれない
記憶ということについて新しく思いは膨らむがその輪郭はぼやけている
スペイン・アンダルシアへの旅のメモと記憶
今日という日を通じて
東京の片隅から遠く離れていく過程
今日という日にもその旅は新しさと鮮やかさをもって現れてくる
旅は日常の心を癒し日常の疲労をとることではない
旅は非日常を日常から分離し区切られた時空間に押し込めることではない
旅は日常から離れていく心と身体の変化のなかに一つの試練と出会いを求めること
旅に入り込み身体を身体として感じる
旅へ期待することよりも旅から与えられるものの方が比較にならないほど大きいのだが
旅にあえて求めるものがあるとしたらそれは東京と異なった疲労の味わいだ
旅はそうした変化のための微細な心と身体の移動から始まるかのようだった
ジャンボジェット機
微細な移動の積み重ねが
速度そのものによって切り裂かれる時空の訪れ
時空の分断される裂け目と速度の変容
アンダルシアに行く
なぜと考えることより
時空の裂け目と速度の変容のなかに身を徐々にさらすことのなかに
旅の基礎的な感覚的体力を徐々に培う
その土地に身をさらすまでの過程のなかに
入り込むその入り方のなかにその土地を感受する準備を身にまといつつ
アンダルシアを感じることのためにある身体の過程
旅のもつ独特なその深淵のなかに
徐々に降りていかなければならない
人生を生きる意思の力で
感覚の変容そのものを気散じさせることなくその時空へと入り込む
微かな変容の連なりと一気に切り裂かれる時空
行路の飛行機のなかですべきことは山ほどある
主に11月下旬予定の個展のこと
ポルトガルの写真選びはやっとのことで大体終えてきた
バッハの暗譜と運指の想像ー解決しうるか
演奏の形
タイトル決め
昨年訪れた隣国のポルトガルを再び夢みて
「荘子」内篇を読み返す
私の現実に十全に呼応してあまりない荘子は
逆説による壮大な詩と知恵
想像できないほどの密度
この一年根本は何も変わらない
時の充実が再び自ずからやってくるまでしばらく変わらないだろう
それはいつやってくるのかやってこないのか
「微明」はそうして身体そのものから出てきた音であった
そのことに何ら嘘はない
それはテーマではない
生きていること
そのもの