根をもつ
秘やかに


根をずらす
繊細に

音楽、音楽、
本当に本当に
大切に大切に

音、音、
かみしめてかみしめて

どうにもしようのない
郷愁と
涙とともに
静かに

いつ
なぜ
とてもうれしいのに
郷愁がおしよせるのか

いつ
なぜ
とても楽しいのに
涙がとめどもなく
流れるのか

梅の木のこぶに
梅の花に
日だまりに
死を感じる

遠くみえない声に
遠く聴こえない地平に
きっとそこにある広い海に
生を感じる

どうにもしようのない郷愁
死と生の安らぎを
いまここに呼ぶ

人がこの世にある限り
音楽は生き続ける
夜のうたを朝に向かって弾くのだ
朝の日だまりとともに消え去るうたを奏でるのだ

夜になれば
みな寝静まる

夜の内奥を聴く
内なる明日のために

遠くの家
汽笛
川

静謐とノイズ
音を聴く

そのときそこにいたという
不在

今ここにあることに
立ち留まり


前をみつめ
過去を宿し
過去を忘れる