熊野 kumano (23) 2010




(つづき 10 )

静けさのなか、楽器の異様に良く鳴るこの乾いた寒さ、世界はその手のひらでおどっている人間の愚かさを沈黙のうちに超えて、悠々たるものにみえる。静寂のうちに、人間を抱え込んだこの自然はあるがままありのままに変化していく。人間も世界のわずかな一部であるというこの当たり前のことを強く認識しなければならない。無常は一つの常態であり、写真こそ無言であり無音であり無常である。

本日は書き出したらとめどもなくきりがなく次第に大きく外れたが、八村さんに諭されるように一区切りした気がしたので、いつになるかはわからぬが、次なる個展への布石を願いつつこの項はこれで終えることにしたい。

今年のこれからの半月の時間は自分の言葉を綴ることよりも、被災地への祈りに捧げ、厳粛な気持ちで来年をむかえたい。来年はまた違った形を求めたい。

春は花、夏ほととぎす秋は月、冬雪さえてすずしかりけり(道元)