sevilla, spain 2008

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ある日の花はその日の花の姿にすぎないのか
花が何日もかかって開いていくのを
花が何日もかかって萎れていくのを
ゆるやかに眺める
内なる花の匂いを嗅ぐために

花の影にある存在をじっと感じる
花という存在のゆるやかな動きのなかに
時の流れと時を支えている空間をみる

子供の頃庭でみた木瓜の花の匂いが
鼻の裏側に残っているのを感じる
日の光
土の匂い
塀のしみ
踏切の音
すべてを肉体に感じていた子供の時間
私はいまそうした時間を生きている
幼年時代という内なる時
不意にその姿を現した
いまという時間

花は私と同化し
花を花としてみるのみならず
花を私としてみている
内なる花の匂いを嗅いで
花の入り口に立ち
風が花の揺れをまねくのを待っている

ある場所にふく風は時の流れを運ぶ
風は空間の摂理を形づくり時を呼ぶ
そして時の流れは定まることを知らない
その風を聴くことが心の動きを呼ぶ
心が身体と同一であるなら
楽器は手に導かれるだろう

そして内なる花の匂いを嗅ぐという問いのさらなる内奥には
花の最も内なる匂いを嗅ぐという問いが秘かに眠っている

絶えず循環する大気の流れが
ある空間的条件に支えられて出現した息吹
風の運動は変幻自在古今東西
絶えることがない
夕闇の川岸に忽然と浮かぶ人々を育んだ犬山の城下
その空間を壊滅させ人々の生活の根を断っていった伊勢湾台風
生の間隙をぬうように吹く
時の使者
時の死神

花の最も内なる匂いは
生の間隙をぬう風に揺れた花の宿命を
一瞬に
永遠に
嗅ぐことのなかにある